キャリア開発史

アングル―――女と日航

かね、ひま、からだ
 リッチという英語を、貧しい時代の日本人は"金持ち"と訳した。しかし、金を使う暇のない人をリッチとは言わないのだそうだ。更に言えば、金と暇はあってもそれを使える健康に恵まれていない人は、豊かとは言えないであろう。生活を豊かなものにするためのさん要素は、金と時間と健康である、その三要素の上にはじめて豊かさが花開くのである。

女のための豊かさ
・ しゃれたレストランには女同士の客が多い
・ 来日ミュージカルや下北沢あたりの小劇場の観客の9割は女である。
・ 北海道や海外のスキー場では、女が優勢である。
・ 通勤電車の中で、男は新聞(日経)、女は文庫本(小説)を読んでいる。
・ 会員制プール、カルチャーセンター、ジャズダンススタジオなど、女で一杯である。
・ わが社の女の同僚も残業が少なく、年休の消化率が高い。
・ 「文化的なことに興味を持つの女性の方が多いみたい。男性は飲みに行っちゃう感じ」(女優・栗原小巻)
・ 「今、女性の方が優秀だなって思います。男の友だちは仕事仕事に凝り固まって、みんなくたびれちゃってる。世界が狭くて何だか現実的なの。」
・ 「リゾート地などでは7割が20代の若い女性です。目的地、宿泊先、どこで何を食べるか、そういうことを決める主導権は、女性が握ってらっしゃるようですね」(石川芳夫日航開発社長)
どうやら、世界有数のこの日本の豊かさは、女が享受しているようである。

ぼく稼ぐ人、わたし使う人
 豊かさの源泉である技術革新が進むにつれ、男はますます多忙になり、女は自由時間が増えるという構造になっている。仕事に忙しい男は。男が女におごる文化のもと、金も時間も自由も乏しいのが現状だ。このため勤続年数の経過につれ、無教養な仕事中毒患者になり果てている。わが社の中堅を構成する団塊の世代は、作家の三田誠広のいう「忠誠心なきモーレツ社員」であり、豊かさとはほど遠い地平にいる。
 いまや、男が稼いで女が使う時代なのだ。それは古くは奴隷が働き市民が遊んだローマ時代、日本人の金でアメリカ人が楽しんでいる今日の現状と酷似している。
 男女雇用機会均等法など、女が劣勢におかれた条件の是正には熱心な風潮がある。この知価革命の時代に、文化、教養、豊かさなどの面では話しは完全に逆転している。新しい形の男女格差が広がりつつあると言えるようだ。

外と内
 豊かな女に金を使わせることがわが社の商売の本質である。豊かさの真偽、レジャーの中身、その善悪を別にすれば、50兆円規模と言われるレジャー産業の中で、都会における旅行についての決定権の85%が女にあるという事実は重い。
 わが社の男性社員の生活を考えると女や若者の好むテレビ番組も見ず、文化の流れを決定づけている女の雑誌も読まず、生活者である女房の意見を聞く時間もない。したがってマーケットの声に極めて鈍感になっている。一方、時代の空気を敏感に感じとっている営業、空港、客室などの現場の声の吸収についても「CIニュース」にみるように、不十分な実態である。

男国鉄、女日航
 「国内線はビジネストラベラーが主力ですので、物よりも情報のサービスを望む方が多くなっています」(国内線アシスタントパーサー・原田名美子)という「おおぞら座談会」の発言をみると、わが社の社員の3分の1を占める女たちは、マーケットの声を柔軟に吸収している。国鉄は男社会のため、女優位のレジャー社会に乗り遅れてしまった。わが社はマーケットの声を高質、多量に抱えているのだから、そういう利点をもっと活用して商売に生かせば良い。
感覚商品のヒットにみられるように、楽しいもの、心地よいもの、好きなものを選ぶという「美感遊創」時代の流れに鈍感な企業は滅ばざるを得ない。
 外から入るマーケットの声、そして内から入るマーケットの声に、もっと敏感になろうではないか。そういう・  ・  ・しくみの開発こそが急務なのである。

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