キャリア開発史

軌跡―私の知的生産―

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11.「発表の場をみつける」発表の場があって、強制されると思います。懸賞論文など自分の手で発表の場を探し出すことです。

12.「知的生産の敵はマージャンと酒である。」マージャンをやめてから私もいくらか知的になったようです。私の場合よく負けて損をしますしね。それから、酒。いくら飲んで帰っても勉強ができるようにと一時頑張ったのですが、やはりうまくいかない。酒は好きですから、私は最近は妥協して、ウィスキーの水割りを飲むようにしています。ウィスキーの水割りなら本も読めますが、ビールだと読めないでしょ。酒飲みの知的生産者は、ウィスキーを愛飲すべし。

13.「本屋へは、買う本を決めて買いに行く」本は、年間2万冊出るというし、大きな本屋だと24万冊あるといいます。こうなるととても選びきれないので、新聞の書評欄を読んで前もって読む物を決めていかないとダメです。どれにしようかさんざん迷って時間を無駄にしたあげく、結果のところつまらぬ本を買うことになりますから。

14.「一生をうかうかとアマチュアで過ごしてはいけない。(松下幸之助)」ある時期までに自分のテーマを決めないと、テーマをさがすだけで一生が終ってしまい、知的生産物は残りません。

15.「第三の名前を自分につける」私の九州の実家の座敷に、「吐鳳」という書がかかっています。オヤジにこれは何かと聞くと、それは「トホウ」と読み、「おおとりを吐く」という意味だと言います。私は大変気に入って、自分のことを「久恒啓一吐鳳」と名付けました。そうすると不思議なもので大きなことを言うようになります。言うからには半分位はやらないとカッコ悪いので、やってしまうということです。新しい名前を自分につけることの最大のメリットは"その気になる"ということです。

16.「同じテーマを毎日考える」電車の中でも週刊誌の広告の中にも「これは!! 」という材料がみつかったりします。

17.「旅行が成功するか否かは、いかにしてガイドを排除するか否かにかかっている。(梅棹忠夫)」これは名言だと思います。本でもそうだと思いますが、「何々入門」というような本がたくさんでているでしょ。そういうものは早めにきりあげて自分で勉強しないといけない。「少年老い易く、学成り難し」ですから。

18.「各分野における自分の先生を決めてしまう」こう世の中に本が多いと、何を読んでいいのかわからなくなってしまう。こうなるともう論理じゃなくて好みの問題になると思います。この分野では誰を先生にするか決めて、その先生の書いたものは必ず読むようにしています。小説は司馬遼太郎、経済は金森久雄、人類学は梅棹忠夫、政治学は中川八洋。何年も続けていると自分の頭の中が一貫してきます。「日本は世界一いいよ」と中川さんは言っていますし、金森さんは、日本の経済はすごいという。司馬さんは、日本の歴史をずっと探っていって日本は非常に立派な国家であると言っていると思います。梅棹先生も、欧米と日本は同じであるといっています。

19.「歴史の本は現代から読みのぼる」海外へ行く場合、その国の歴史はその国で読めばよくわかるのです。本は古代から読む必要はないのです。身近な時代からよめば、時間も節約できるし、興味も長続きするものです。

20.「気に入った人の本は集中して読む」私の場合は2・3年で変っています。大学の最初の頃は、「愛と認識との出発」の倉田百三。次は三島由起夫。本多勝一。梅棹忠夫。司馬遼太郎ときています。

21.「晩メシは、自分より偉そうな奴と外で食うものだ。(河野一郎)」この言葉通り実行したこともありましたが、自分の勉強がおろそかになってしまいますから、人生のある時期にはこういうことは必要だと思います。渡部昇一も、人と会わないようにしていると言ってますが、やはり時間がもったいないということでしょうね。

22.「知的生産を行う上で一番参考になった人は秋山真之です」彼は司馬遼太郎の「坂の上の雲」に出てくる日露戦争の時の海軍参謀です。彼は、古今東西のすべての戦争の歴史を調べました。そして「なぜ勝ったか」を調べました。織田信長は鉄砲をいっぱい使ったから勝ったとかナポレオンは火力を使うのがうまかったからとか、主力を一ヶ所に集め突破したとか、そういう事実を全部洗いだした。そうした個々のバラバラの事実を総合していく中で彼は知的生産の技術を学んだのだと思うんです。その中からはじめて真理と呼ぶべきものがつかめる訳です。何百ものケースを並べて、これはこれと同じだとかいいながらとうとう戦争の原理にまで圧縮したのではないかと思います。「事実の中に真実がある」ということでしょうか。私が札幌でまとめたレポートや、ロンドンで書いた論文も彼の影響が多分にあるのです。秋山真之の研究をもっとやりたいなと考えています。

23.「文学者や詩人の書いた文章作法は役に立たない」むしろ自然科学畑の人間の文章の方が、参考になります。私が模範としている文章は、梅棹忠夫のやさしい文章、本多勝一のはぎれのよい文章、そして司馬遼太郎の名文などです。こういう人達のような文章を書けるように早くなりたいと思っています。

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