1988年11月8日(火)
ニュー社内報 ウケてます

レーザーディスク・日刊・システム手帳版も登場
新人類社員へも対応 旧態依然ではゴミ箱行き

 社内報がいま、面白い。情報の速さでは社外の一般メディアに負けない日刊紙タイプ、きめ細かな編集が売り物の週刊誌タイプ、映像や音響をフルに使ったレーザーディスク版……。趣向の変わった社内報が続々登場している。各社とも、大きな狙いは「情報の共有で社内の一体感を増す」である。

日航は2万4千部も
  「号外だって出しますよ」。日本航空広報部の久恒啓一課長補佐(38)は、自信ありげに話す。
  「イキのいいニュース」をうたい文句に、同社が今年3月発刊させた週刊社内報「おおぞらWeekly」。A4判4ページ、発行部数2万4千部。国内はもちろん世界の支店、営業所にもファックスも使って月曜の朝配信される。
  編集部員は、編集長の久恒さんと副編集長二人。一般紙を対象とする自社の記者会見にも出席するし、社内各所に情報源や投稿者を開拓している。「あふれるほどの情報量」(久恒さん)が自慢だ。
  編集は二台のコンピューターを使う。出先からでも、ハンディワープロで打ち込み、入力するから、機動力だって備わっている。
  紙面は「国際運賃値下げの理由」「営業状態」など経営の最新ニュースや図解入り解説記事、社長のメッセージ、社外を含めた週刊スケジュール、そして楽しい社内の話題を満載している。
  久恒さんはいう。「社内報は伝達と親ぼく、2つの役割がある。従来型の月刊社内報は、伝達誌にしては情報が遅く、親ぼく誌にしては堅すぎるケースが多い。そこで、伝達誌として週刊社内報を創刊し、月間の『newおおぞら』は親ぼく誌に徹している」

編集長は毎日交代
 日刊の社内報ともなるとニュース性が高まる。パソコン専門誌の発行やパソコン通信網の運営、ソフト開発などで知られる「アスキー」社。同社は昨年10月、「夕刊アスキー」を発行した。
 A3判2ページで、部数は約400部。月曜から金曜まで週5日間、毎日午後5時半までに、社内13部門の各セクションに配達される。内容は1ページ目が「社内かわら版」、2ページ目は「コンピュータ業界情報」のほか、その日の一般ニュースを収容する。ソウル五輪では日本選手の成績を掲載した。時事、共同通信のニュースも載せるから本格的だ。
 担当しているのはマーケティング本部アスキーライブラリーのメンバーたちだが、紙面に変化をつけようと、編集長は5人のメンバーが毎日交代する。原稿は部員が書いたり、社内のコンピューターネットワークを通じて送られてきたり。パソコンで編集、コピーして印刷する。
 発刊当初から夕刊に携わってきた総編集長役のライブラリーリーダー、加瀬典子さん(27)は「夕刊アスキーを読めば、次の日の業界紙や一般紙に載る内容は、大体前の日につかめる。来るのを待って居残る社員もいるんですよ」と、胸を張る。
 「百聞は一見にしかず」なのが、動くビデオ社内報である。銀行などですでに“発行”されている。
 オーディオメーカーの「パイオニア」は、印刷した月刊社内報だけでなく、レーザーディスク利用の季刊社内報を作っている。昨年春の創刊、9月には第7号を出した。
 これを全部見ると、1時間半はたっぷりかかる。内容は職場紹介や保養所、レストランの案内、ニュース、ゲームなど盛りだくさん。「家族に見せれば、夫の職場を理解してもらうのに最適」という。900から1000枚をつくり、各部課に配付している。
 ほかにも、はやりのシステム手帳の用紙サイズで社内報を作る会社もある。必要な情報はそのまま手帳にスクラップというわけだ。視覚時代を反映して、社内の有線テレビで情報を流す会社もある。
 これら“先端社内報”で、どのくらい会社の「風通しが良くなったか」は、わからない。が、40年代生まれの若い社員がどんどん増えてくることを考えれば、旧態依然の社内報では、そのままゴミ箱へ、ということになりかねない。ここでも企業の意識改革が迫られている。

夕刊読売新聞

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