月刊総務9月号
社内報はいま、組織変革の推進役となっている!?
活字社内報ならではの役割を問う電子メディア普及との棲み分け
●PR研究会代表 池田喜作

社内報OBの厳しい視点
 
今回で39回目になるこのコンクールは前年の四月からその年の三月までに発行された一年分の各社の社内報を、五人の審査員が手分けをして審査し、他社の参考になる成果を上げたものを毎年表彰してきた。
 五人の審査員の顔ぶれは、その時々適切なアドバイスをえられそうな方たちにお願いしてきた。大まかにその時々を振り返ると、昭和30年代当初はマスコミの第一線で活躍している有名な雑誌の編集長にお願いし、後半は立教大学産業心理学教授の武沢信一教授や慶応義塾大学人間関係学科の関本昌秀教授、成城大学の石川弘義助教授のようなヒューマン・リレーションズの学者と、名だたる経営評論家やジャーナリストに依頼したが、昭和四十年代まではほとんどが審査を依頼されてから初めて社内報というものを知る“外からの視点”だった。

 その点、昭和50年代以降はこのコンクールで二回以上獲得したことのあるOB、京都府警『平安』の編集主任だった本多清さん、フジタ『藤園』の倉知とも子さん、『静銀の窓』の木村幸男さんといったOBにも加わってもらっている。

 今年は、かつて日本航空の広報課長で社内報『大空』の編集長、そして日経連社内報センター編集委員時代に「戦略的社内報論」を発表し、稀有の論客として注目された久恒啓一さん(現宮城大学教授)にお願いした。久恒委員は、
「日本経済の厳しい状況の中で、社内報担当者の努力と苦悩が感じられる内容であった。
 日本の社内報は、ヨコのコミュニケーションという課題に関してはすべての社内報があるレベルを超えているとの印象をもった。しかし社内報の命は、経営情報の伝達力にある。上から下へのタテのインフォメーションを必要十分に達成できるかが、経営にとっての本質的な価値を決定する。この意味で多くの社内報に甘さが感じられた。経営の意志を真正面から伝えようという迫力のある社内報が少なかったのは、日本の社内報にとって危機的な状況である。
 私は(1)ポリシーが明確であるか、(2)企画力が優れているか、(3)ビジュアルコミュニケーション力があるか、(4)インフォメーションとコミュニケーションのバランスがよいか、という四つの基準で審査に当たった」 と述べている。(後略)

BACK