キャリア開発史

アングル―――社内コミュニケーションを考える

「いつまでもあると思うな親と金」
 これは福岡空港支店のすぐれたミニコミ「とびうめ」の民営化特集の標語である。親とは親方日の丸、金とは給料をもじったものだそうだ。
 けだし名コピーである。これはほんの一例である。当社には、このような多様で活発なミニコミ群れが膨大な量存在している。

情報の交流と対流
 当社は、社内のコミュニケーションは極めてお粗末な状態にある、それは「CIニュース」「CANDI」のような各種のアンケートの結果を見れば、一目瞭然である。
 民営化を成功させるための推力としての役割は大きいのであるが、まずヨコのコミュニケーション、社内の部門間、日本航空グループ内の情報の交流について報告、相談という心構えを強調することも一案である。
しかしそれだけではこの宏大な広野に情報を行きわたらせることはできない。
情報の共有をめざしてコンピュータを活用した情報インフラを構築することがなんとしても必要なのである。
 次はタテのコミュニケーション。
 情報の対流、上から下へのコミュニケーション(上意下達)と下から上へのコミュニケーション(下情上通)である。
下情とは、社員(しもじも)の感情、表情、情報などの情をいう。ここに鈍感であってはならない。職制、社内メディア、組合のビラ、現場を歩く事などにより骨身を惜しまず情報収集に此れ務めなければならない。
伝えたいことが伝わらないと嘆く前に、他の発している信号を果たして受け止めようとしているかを考えてみよう。それが社内コミュニケーションを考えるポイントなのである。

社内ミニコミの世界
 「おおぞら」「翼とともに」は社内におけるマスコミであり、新聞にたとえると全国紙、雑誌にたとえると、総合雑誌、テレビにたとえるとNHKである。つまりパワーもあるが、それなりの限界も持っている。
一方、社内ミニコミは新聞にたとえるとブロック紙、地方紙、機関紙であり、雑誌では専門誌、男性誌、女性誌、タウン誌にたとえることができる。またテレビでいうと民放といったところであろうか。
それぞれの特性や媒体力を深く認識して訴えたい内容や訴えたい対象を考えて、多面的、立体的に、重層的そして効果的なコミュニケーションを追及したいものである。
 あらためてミニコミ群を眺めてみるといくつか気がつくことがある。たとえばタイトルのつけ方。ニュース、たより、速報、回報、プラザ、白書等がネーミングの主流のようだ。
 タイトルがひらがなのもの(かんさい、きたのなかま、なにわ、そうび、はばたき、なごやか)は親睦が目的のものに多く、地方支店によくみられる。
 また漢字(手荷物白書)や英字(FLIGHT SAFETY、ASK ME)のものは、伝達を目的としたものに多いようだ。
この親睦と伝達がミニコミ誌の二大目的だろう。
また、表紙にもそれぞれの特色が出ている。空港全景、飛行機をあしらったものからタイトルと目次だけのもの、そして漫画やイラスト、そして切手で見る世界のパイロットまで多彩である。
次に目についた好企画を挙げてみよう。
 「航務プラザ」の『お天気豆知識』、「STATION MANAGERS'INFORMATION」の『所長? 駅長? ステイションマネージャー?』、「APPROACH」の『ケガをさせないコミュニケーション』、「支社だより」の『鳥人間クラブ』、「6Bニュース」の『Viva! 国際結婚』、「客乗回報」の『他社機、まるかじり』、「なにわ」の『店内放送実施のお知らせ』、「きたのなかま」の『お得意様デスクを10倍上手に利用する法』、「機長会会報」の『機長のセールス活動』、「でい すいんぐないと」の『B七六七博多どんたく参加』、「FLIGHT CREW NEWS」の『ハイ!こちら配車室デス!』、「SPICE BOX」の『ARZパラダイム試論』等。
 いかがだろうか。多様で多彩な文化が息づいているではないか。
 これ以外にも「いちょう」(ホテル日航大阪)、「AGSだより」(AGS)、「JAAファミリー」(JAA)などグループ企業の社内報をふくめると、すでに膨大な量コミュニケーションの媒体が存在しているのである。

ピラコミ・くちコミ・ミニコミ、触れコミ
 組合の持つ伝達力は組合員に対するピラコミとくちコミであるのに対し、会社が社員に対し持つメディアは触れコミ(お触れを出すという意味で)と社内マスコミ、そして社内ミニコミである。
組合の速報性重視に対し、会社は本格性を重視しているといえる。効果的なコミュニケーションをめざすならば、訴えるべき対象のニーズ、文化、伝統、感覚などを把握したうえで、自己の持つどの媒体を採用するかを決めるといったコミュニケーション戦略が必要である。
 速報性に関していえば、直接音声で語りかけることによる効果の大きい全国放送の活用(聴取率の高い時間や方法の研究、タレントの育成)であり、もう一つは、毎日あるいは毎週発行する社内新聞の育成である。
ミニコミのなかで最も手軽で効果もある手段はビラである。それは時間と金と労働力の不足や技術的未熟さにも関わらず効果の大きい点で、マスコミに並ぶコミュニケーション機能を発揮する。
組合の持つ力の源泉に一つは、活発なところでは平均して1日3枚も出し続けているビラによるところが大きい。
「日本人は、水と安全はただだと思っている」と喝破したのはベンダサンであったが、日航は安全とコミュニケーションについては、適正なコストを払う必要がある。
 本腰をいれて、社内コミュニケーションを論議し、そして実行すべき季節である。

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