信頼回復で雪印に提言 宮城大ゼミ生

 昨年、集団食中毒事件を起こした雪印乳業(本社東京)の「信頼回復」をテーマに、宮城大(宮城県大和町)の学生がこのほど、独自の提言書をまとめた。キーワードは「安心」。品質管理の徹底だけでなく、消費者の視点に沿ったコミュニケーション戦略で「安心」を届けることなど、丹念な調査に基づいた学生らしい新鮮なアイデアが盛り込まれた。雪印側は大きな関心を寄せており、あす30日、学生を東京の本社に招き提言書を受け取る。

<利益優先の姿勢指弾>
 提言書作成には、事業構想学部の久恒啓一教授の「顧客満足ゼミ」に所属する学生6人が、昨年10月から取り組んた。
 提言書は「(事件前の)雪印は経済性を追求するあまり、消費者に提供しなければならなかったものを犠牲にしていた」とずばり指摘。当時の社長が、事件の情報を十分把握していなかった危機管理体制の甘さにも目を向けた。
 その上で、消費者が望む「安心」とは(1)衛生管理や品質の良さ(2)誠実な企業姿勢(3)問題発生時に素早い対応ができる能力−と、企業が目指すべき方向性を明確に示した。
 具体的な提案項目は、図解で分かりやすく表現した。消費者とのコミュニケーション拡充策として、定期的な店頭活動の実施、社外活動の奨励、雪印の会社を紹介する新聞の発行、消費者との触れ合い教室の開催、社外の生活危機管理委員会の設置などを挙げた。

<再建への努力に感動>
 社内の情報伝達の改善策として社内メールマガジンの実施を挙げ、社内トレード制による人事活性化などにも踏み込んで問題提起した。
 ゼミは、雪印東北総括支店(仙台市)の社員からのヒアリングや、雑誌に掲載された西紘平社長、石川哲郎前社長のインタビュー記事の分析、仙台市内での消費者アンケートなどを行い、提言内容を検討してきた。
 ホットな社会問題を素材に、企業の役割や顧客との関係を客観的にとらえるのが主眼だったが、メンバーの中には「店頭活動をする社員の姿を見て雪印が好きになった」という人も少なくなかった。事業構想学部4年の八巻幸枝さん(21)は「再建に向け社員が頑張っていることはよく分かった。それを消費者にどう伝えていくかが問われる」と話す。
<あす東京本社で説明>
 事件後、雪印は「VOICE活動」という全社的な信頼回復活動を展開中。東北でもスーパーなどでの店頭活動をはじめ、住民を招いての工場見学会、コミュニティー活動への参加も活発で、方向性は提言書の指摘と一致している。「事件直後、1日250件を超す苦情の電話があったが、今は励ましや提案の声も増えている」(東北統括支店お客様センター)という。
 今回の提言書について、雪印は「大変ありがたい。学生の気持ちを受け止め、今後の信頼回復活動に生かしたい」(本社広報室)と話しており、学生たちを30日に東京の本社に招き、関係部署の担当者らが提言の説明を受ける。

2001.5.29
河北新報(夕刊)

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