1992年2月17日(月)
見直される社内報

セミナー大盛況
全員が編集参加の企業も

活性化へ役割ぐんと大きく
 「社内報こそ、企業活性化の重要な手段のひとつ」として、その編集に大きなウエートを置く企業が、最近、目立って増えている。会員企業向けに、社内報作りのノウハウを提供している日経連社内報センターによると、会員企業数が昨年は72社も純増、同センター主催の社内報セミナーも、毎回、満員の盛況というのだ。かつては不景気の際、経費削減のターゲットとされた社内報だが、今や、その出来具合が、トップの最大関心事の一つとなっている。

 最近の社内報ブームについて、同センターの宇野勝彦主幹は次のように分析する。「企業の経営多角化が進み、その全体像が見えにくくなっている今、社員が目標に対して結集するには、社内情報を、より積極的に流すことが大事なのです」
 とはいえ、情報過多の時代。社員に社内報への関心を持たせ、読ませるのは並大抵のことではない。
 建築資材メーカーの「田島ルーフィング」(本社・足立区小台)。社内報の分野では、コンクールの受賞常連会社として名をはせている。
 同社の社内報「和」の編集に携わる18人の編集委員は、2年生以上の社員全員が対象だ。任期は1、2年で、半数が毎年入れ替わり、500人の全社員の約半数が、すでに編集委員を経験しているという。
 メーカーのため、工場、研究所、営業など、勤務時間内は余裕のない職場が多く、編集委員は時間外に取材、執筆をこなす。しかし、編集長の安藤浩総務課長は「このやり方だと、いやが上にも社内報への関心が高まる。それに、編集委員をやれば、社内にシンパのアンテナを張りめぐらせることが出来、必ず自分のためにもなる」と、全員編集の効果に胸を張る。
 一方、社内報作りのパイオニアを自他ともに許す日本航空。広報部の久恒啓一課長は、「社内広報が経営に大きく影響する時代。よその部が何をやっているのかわからないようでは、他社との競争どころじゃありませんからね」と、社内広報の重要性を力説する。
 同社では、社内のコミュニケーション作りに重点を置く月刊「おおぞら」に加え、4年前からインフォメーションを主体とする「おおぞらウィークリー」の発行を始めた。「新聞よりも先に速報するのがモットー」と久恒課長。刷り上がった「おおぞらウィークリー」は、直ちに国内はもとより、全世界の事業所にFAX送信される。
 各社の最近の社内報で特徴的なのは、写真、イラスト、グラフ、漫画などをふんだんに使い、若い人の感性に訴えるビジュアルな紙面作りになってきたこと。
 だが、それにも増して社内報のクオリティーを決定づけるのが企画力。編集陣たちは、社会の動向に目を光らせ、それを敏感に反映させた特集を組む。最近は、環境問題、社会貢献活動、メセナなどが、こぞって取り上げられている。
 「活気のある社内報を作っている企業は、必ず業績もいい。つまり、社内報を見れば、その会社がわかる」と宇野主幹は断言するのだ。

読売新聞

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